肝細胞癌 IMbrave150 trial

Atezolizumab plus Bevacizumab in Unresectable Hepatocellular Carcinoma

Richard S. Finn, Shukui Qin, Masafumi Ikeda, et al, N Engl J Med. 2020 May 14;382(20):1894-1905. [PubMed]

対象疾患 治療ライン 研究の相 主要評価項目 実施地域 日本の参加
肝細胞癌 一次治療 第3相 全生存期間
無増悪生存期間
国際 あり

試験名 :IMbrave150 trial

レジメン:アテゾリズマブ+ベバシズマブ vs ソラフェニブ

登録期間:2018年3月15日〜2019年1月30日

背景

切除不能肝細胞癌に対する一次治療として、マルチキナーゼ阻害薬であるソラフェニブ(SFB)とレンバチニブが承認されている。抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブ(Atezo)と抗VEGF抗体であるベバシズマブ(BEV)を併用した第1b相試験において、有望な治療効果(奏効率: 36%、無増悪生存期間中央値: 7ヶ月)と忍容性が報告された。そこで今回、切除不能肝細胞癌に対する一次治療として、Atezo+BEVとSFBを比較した非盲検無作為化比較第3相試験が行われた。

シェーマ

統計学的事項

主要評価項目:全生存期間、無増悪生存期間

本試験はSFB群を対照として、Atezo+BEV群の全生存期間のハザード比が0.71となることを検証する優越性試験として設計され、検出力80%、全体の両側 α=0.05とし、全生存期間は α=0.048、無増悪生存期間は α=0.002とした。480例の登録・312イベントが必要と設定された。

試験結果:

  • 2018年3月から2019年1月の間に、17カ国111施設から501例が登録され、336例がAtezo+BEV群に、165例がSFB群に割り付けられた。
  • 患者背景に大きな隔たりは認められなかった。
1. 全生存期間(主要評価項目)
  中央値 95%信頼区間 HR 0.58     
(95%C.I. 0.42–0.79)
p<0.001     
Atezo+BEV群 (n=336) 未到達
SFB群 (n=165) 13.2ヶ月 10.4–NE
2. 生存割合
  6ヶ月生存割合 95%信頼区間 1年生存割合 95%信頼区間
Atezo+BEV群 (n=336) 84.8% 80.9–88.7 67.2% 61.3–73.1
SFB群 (n=165) 72.2% 65.1–79.4 54.6% 45.2–64.0
3. 無増悪生存期間(主要評価項目, RECIST1.1, 中央判定)
  中央値 95%信頼区間 HR 0.59     
(95%C.I. 0.47–0.76)
p<0.001     
Atezo+BEV群 (n=336) 6.8ヶ月 5.7–8.3
SFB群 (n=165) 4.3ヶ月 4.0–5.6
4. 奏効割合 (RESIST1.1, 中央判定)
  奏効割合 (RESIST1.1) 95%信頼区間 P<0.001
Atezo+BEV群 (n=336) 27.3% (CR18例、PR71例) 22.5–32.5
SFB群 (n=165) 11.9% (CR0例、PR19例) 7.4–18.0
5. 奏効割合 (HCC-Specific mRECIST, 中央判定)
  奏効割合
(HCC-Specific mRECIST)
95%信頼区間 P<0.001
Atezo+BEV群 (n=336) 33.2% (CR33例、PR75例) 28.1–38.6
SFB群 (n=165) 13.3% (CR3例、PR18例) 8.4–19.6
6. QOL・身体機能・役割機能低下までの期間(EORTC QLQ-C30)
  QOL 身体機能 役割機能
  中央値(95%信頼区間) 中央値 中央値
Atezo+BEV群 (n=336) 11.2ヶ月 (6.0–NE) 13.1ヶ月 9.1ヶ月
SFB群 (n=165) 3.6ヶ月 (3.0–7.0) 4.9ヶ月 3.6ヶ月
  HR0.63
(95%C.I.0.46–0.85)
HR 0.53
(95%C.I. 0.39–0.73)
HR 0.62
(95%C.I. 0.46–0.84)
7. 有害事象(NCI CTCAE ver.4.0)
  Atezo+BEV群(n=329) SFB群(n=156)
  全Grade Grade 3/4 全Grade Grade 3/4
高血圧 98 (29.8%) 50 (15.2%) 38 (24.4%) 19 (12.2%)
疲労 67 (20.4%) 8 (2.4%) 29 (18.6%) 5 (3.2%)
蛋白尿 66 (20.1%) 10 (3.0%) 11 (7.1%) 1 (0.6%)
AST上昇 64 (19.5%) 23 (7.0%) 26 (16.7%) 8 (5.1%)
掻痒症 64 (19.5%) 0 15 (9.6%) 0
下痢 62 (18.8%) 6 (1.8%) 77 (49.4%) 8 (5.1%)
食欲低下 58 (17.6%) 4 (1.2%) 38 (24.4%) 6 (3.8%)
発熱 59 (17.9%) 4 (1.2%) 15 (9.6%) 2 (1.3%)
ALT上昇 46 (14.0%) 12 (3.6%) 14 (9.0%) 2 (1.3%)
便秘 44 (13.4%) 0 22 (14.1%) 0
ビリルビン上昇 43 (13.1%) 8 (2.4%) 22 (14.1%) 10 (6.4%)
皮疹 41 (12.5%) 0 27 (17.3%) 4 (2.6%)
腹痛 40 (12.2%) 4 (1.2%) 27 (17.3%) 4 (2.6%)
嘔気 40 (12.2%) 1 (0.3%) 25 (16.0%) 1 (0.6%)
咳嗽 39 (11.9%) 0 15 (9.6%) 1 (0.6%)
インフュージョンリアクション 37 (11.2%) 8 (2.4%) 0 0
体重減少 37 (11.2%) 0 15 (9.6%) 1 (0.6%)
血小板減少 35 (10.6%) 11 (3.3%) 18 (11.5%) 2 (1.3%)
鼻出血 34 (10.3%) 0 7 (4.5%) 1 (0.6%)
無力 22 (6.7%) 1 (0.3%) 21 (13.5%) 4 (2.6%)
脱毛 4 (1.2%) 0 22 (14.1%) 0
手掌・足底発赤知覚不全症候群 3 (0.9%) 0 75 (48.1%) 13 (8.3%)
結語
切除不能肝細胞癌に対する一次治療として、Atezo+BEV群はSFB群に比較して、全生存期間と無増悪生存期間を有意に延長した。
執筆:神奈川県立がんセンター 消化器内科・肝胆膵 佐野 裕亮 先生
監修:国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科 科長 池田 公史 先生

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